境界線は、壁ではない
「境界線を引く」と聞くと、相手を突き放すような、冷たい響きを感じるかもしれません。優しい人ほど、線を引くことに罪悪感を持ちます。
でも境界線は、相手を締め出す壁ではありません。「どこまでが私の荷物で、どこからが相手の荷物か」を仕分けるための線です。仕分けができていないと、本来相手が持つべき荷物まで、気づかないうちに自分が背負うことになります。
相手の機嫌は、相手の荷物
相手の機嫌を直すことは、あなたの仕事ではありません。
彼が不機嫌なとき、まっさきに「私、何かしたかな」と原因を自分の中に探す。思い当たらなくても、空気を軽くするために先回りして謝る。これは優しさの形をしていますが、実際に起きているのは、相手の荷物を代わりに持ち上げることです。
そして、荷物を持ってもらえる人は、自分の荷物の持ち方を覚えません。あなたが背負うほど、彼は自分の機嫌を自分で扱う機会を失っていきます。つまり、背負い続けることは、長い目で見ればふたりの関係のためにもなっていないのです。
線を引く練習は、小さくていい
境界線の練習は、宣言や喧嘩ではなく、心の中のひとつの問いから始められます。相手の不機嫌に気づいたとき、動く前に「これは誰の荷物だろう」と一度だけ問うことです。
自分に原因となる事実があるなら、向き合えばいい。思い当たる事実がないなら、それは相手が自分で扱うべき荷物です。あなたにできるのは、代わりに背負うことではなく、相手が扱い終えるのを、自分の生活を続けながら待つことです。
境界線は、関係を壊すものではありません。どちらかが背負いすぎて潰れないように、関係を対等に保つための骨組みです。いま自分がどれだけ背負っているのか、一度見つめてみてください。

